ショートショート「汽車釣り」

池が無い丘の上で、釣竿を垂らしているジェントルマンがいる。

私は興味本位でつい声をかけてしまった。

ジェントルマン曰く、ここには主がいるとの事。

今日こそ釣れる。

条件は揃っている。

長い事観察してきたから確信しているのだと言う。

何が釣れるんですか、と聞くと「汽車｣と答えが返ってきた。

なるほど、餌の代わりに石炭がぶら下がっている。

僕はどうしても行きたい星があって、その汽車で向かうんだよ。

そう真面目に語るジェントルマンに呆れてしまい、私は会釈をして丘を降りることにした。

途中轟音と共に突風が駆け抜けた。

振り返るとジェントルマンの姿は消えていた。

遠くの空から汽笛が聞こえた気がした。(終)

最近上手く書けないなあと自分を観察していたら、知らず知らずにハードルを上げていたようです。ちょっと上達したらすぐに大作を書かなければ、と自分にプレッシャーをかけて肩肘を張ってしまうようです。自分の意思でハードルを上げるのは良くないのかも知れません。

ショートショート「ドミノの星」

今日もそろそろ時間だ。
私は箱からドミノを取り出して並べ始めた。
これは毎日のルーティンで師匠からの言いつけだ。
みんなこの作業を経験して一人前になる。
私も早く見習いから卒業して、憧れのカリスマになるんだ。
そんな妄想を考えていたら手元が狂い全部倒れてしまった。
やり直し。時間がない・・・。
今度はしっかり集中して完成した。
息を整え、最初のドミノを倒す。
どんなに回数を重ねてもこの最初だけは緊張する。
ドミノは綺麗に輪を描き、やがて中心へと続いていく。
最後のドミノが倒れると鈍く光出した。
それを確認した後夜空を見上げた。
何とか上手くいったようだ。
あの沢山ある星の1つが、今私がドミノを倒して作った星だ。
憧れの先輩達はもっと綺麗に華やかに輝かせる事が出来る。
私も早く星座デザイナーとして活躍したい。
夜空を見つめながら強く思った。(終)

在るバイトをしているんですが、新年度の余波がまだまだ続いていて投稿がこんな時間になってしまいました。たまたまだけどこの主人公は紛うことなき今の僕でしょう・・・。

ケムリクサの12.1話が公開されて昨晩は盛り上がりました。

続きを描くとしたらキャラクター達の次のゴールを決めなければなりません。

1期は「好きを見つけること。」でしたが果たして2期は・・・？

楽しみですねぇ。

ショートショート「引き出しアパート」

目が合った。
机の引き出しから物音がするので開けてみると小さい女の子が住んでいた。
こちらをギロッと睨み、覗くなと抗議をしているので思わず閉めてしまった。
下の引き出しにも別の女の子が住んでいた。
どうやら僕の机をアパートにしているらしい。
暫く経つと色々な問題がやってきた。
騒音。
水道トラブル。
異臭。
エアコンの修理。
隣人トラブル。
何か起きる度に何故か僕に訴えてくる。
僕を大家だと思っているらしい。
勝手に住み込んでおいて、なんて態度だ。
その時、飼い猫のタマが女の子達に飛びかかった。
女の子達はちゅーちゅー言いながら逃げ出していった。
どうやらネズミが化けていたようだ。
僕の引き出しに静けさが戻った。
次の日またしても物音がするので引き出しを開けると、いつの間にやらタマとメス猫と沢山の子猫達が住み込み、飯はまだかと僕にクレームを入れてきたのだった。(終)

本日のショートショートはお休みです。

今日のショートショートはイマジネーションの湧くタイトルが作れなかったので、最近描いたデッサンで勘弁してくんさいな。

コツコツ練習しています。

ショートショート「すりおろし電話」

古くなった電話を回収してすりおろすという仕事をしている。
すりおろした時に出る滴を集めて、遠心分離機にかける。
すると透明な液体と真っ黒な液体に分かれる。
透明な液体の方を固めると綺麗な結晶が出来る。
これは電話に溜まっていた楽しい思い出の結晶である。
この結晶を加工し色々な品物にして売っている。
身近に置くとポジティブになる効果があるのだ。
因みに残った黒い液体の方は良く燃える性質の結晶が出来る。
実はこちらの方が色々と需要があったりしている。(終)

ショートショート「雲が泣いている」

雲が泣いている。
涙が雨になって滝のように流れ落ちてきた。
すっかり地上は水浸しだ。
どうしたのと聞くと、彼女が怒ってどこかへ行ってしまったらしい。
これ以上雨が降られるのはたまったもんじゃない。
あれこれ悩みを聞いてやると落ち着いたのか、雨も細くなってきた。
私は安心してショッピングの続きをした。
店を出ると空はすっかり晴れていた。
雲の切れ間から鮮やかな虹が大きく輪を描いている。
どうやらふたり、仲直りできたみたい。(終)

今日の午前中はirodori、たつき監督の昔の作品を片っ端から見ていました。日進月歩だなあと感心したり、最初から光る物があるなあと原点を垣間見たり良い刺激を受けました。

irodoriの制作風景を見てみたいです。

どなたか密着取材をお願いします・・・。

ショートショート「霜降りのグミ」

長年の品種改良の末、お菓子のグミがなる植物を開発した農家がいた。
とても高級で有名だ。
霜降りで凄く濃厚な味。
霜降りの白いところはりんごの蜜みたいな物。
1度口にしたらもう病みつきだ。
個数は少ないけど、物凄く濃いので誰しも満足してしまう。噛み心地も香りも絶妙。
予約は数年先まで埋まっており、なかなか手に入らない。
そんな大変有名な農家だが、何故か畑の警備はザルである。いても番犬にしては心細い昼寝ばかりしてる老犬1匹だけ。
でも農家は心配していない。
今日も畑を確認しに行くと、離れに設置したすくい網へ盗人が何人か引っかかっていた。
実はこのグミ、収穫する際にあるコツを知らないとグミの弾力で吹き飛んでしまうのだ。
コツはもちろん秘伝である。(終)