林 孝光の漫画倉庫

まんが家です。最近は毎日クイックスケッチ(ジェスチャードローイング)と落書きを投稿しています。

ショートショート「渦巻く大乱闘」

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そこでは双方が揉みくちゃになって殴りあっていた。
大勢が上へ下へと大騒ぎ。
まさに大乱闘と表現するのが相応しい。
ぶくぶくと泡を吹きながらきりもみ回転している奴もいる。
押しつぶされて水を吐き出している奴もいる。
ピー!
試合終了の合図が鳴った。
天井が開くと暗闇中に光が差し、女神が顔を覗き込んだ。
洗剤の香りが漂う青空の下、物干し竿からぶら下がった洗濯物達は「次こそ見てろよ」と早く洗濯される日が来るのを待ち焦がれていた。(終)

ショートショート「石橋を叩いて跳ぶ男」

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彼は順番を迎えると、おもむろに測量機を設置し測定を始めた。
それから風向きを確認し、気温を計り、湿度をメモし、奇声をあげながら塩をまいた。
いつの間にやら周辺は緊迫感が漂い、皆が彼に視線を注いでいた。
彼は空に向かってピンと手を挙げる。
そして真っ直ぐ走り始めると、そのまま跳び箱へ正面衝突をした。
静寂・・・。
皆が見守る中、彼はむっくと立ち上がり腕組みをしながら不満げに首を傾げブツブツ唸り始めた。
すぐ横で同じ高さ、三段の跳び箱を小学生の女の子が軽々と飛び越している。
それを見た彼はポンと手を叩き、踏切板を拾い上げこう叫んだ。
「そうかー!この踏切板は子供用だったのかー!通りで跳躍力がいつもと違うと思ったんだー!」
聴衆を論破出来たと思ったのか、彼は踏切板を脇に堂々と胸を張って運動場を去って行った。(終)

 

ショートショート「夕日味のカレー」

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友人がカレーをご馳走すると誘ってくれた。
夕方家に着くと梯子を片手に出迎えてくれた。
これからカレーの仕上げに取り掛かるらしい。
おもむろに梯子を空にかけると、そのまま登って行き、なんと夕日をお玉ですくい始めたではないか。
なんでも夕日を隠し味に使うんだそうだ。
全部すくうと明日の夕日が無くなってしまうから、ちょっとだけ拝借。
カレーに混ぜると鮮やかなオレンジ色になった。
ちょっとピリッとするけれど、ホカホカと優しい味がした。
月はどんな味だろうと友人に聞くと月は食材に使うのは禁止になっているんだと説明された。
あまりの美味しさに世界中のグルメが月を乱獲するので取り決めが出来たらしい。
月の表面がでこぼこなのは、その名残りなんだそうだ。(終)

 

ショートショート「火照る手紙」

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ポストから湯気が出ている。
ヤカンみたいにカタカタ蓋がぶれている。
開けるとむわっと熱気を感じた。
中には一通の手紙が入っている。
真っ赤で熱々だ。
そーっとつまんで部屋に運んで、封を開けた。
読んでみると私宛のラブレターだった。
私も触発されたのか顔が真っ赤になった。
何故かスプリンクラーが感知して頭から水浸しになってしまった。(終)

漫画家の聖地に行って来ました。

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何処かへサイクリングに行きたいと思い、地図を眺めていると意外と池袋が近そうに見えたので出かけてきました。

途中でまんが道トキワ荘で有名な漫画家の聖地「松葉」を通るので昼食がてらよって行きました。漫画家を目指して早11年目!(途中長い空白期間有り)漸く禊を済ませた気がしました。

店内は観光客らしき人達や漫画好きな親子で賑わっており、娯楽の偉大さが身に染みて分かりました。

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何故かティッシュで顔が隠れてる満賀道雄

 

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池袋のジュンク堂近くの駐輪場は2時間まで無料で止められると知りラッキーでした。

最近やけにアニメの名探偵ホームズが気になっていたので絵コンテを購入しました。この作品のコミカルな絵柄が好きで参考にしたいと思います。五十嵐大介先生の海獣の子供も買いました。

池袋は近からず遠からずで、気分転換にプラプラ行くには良い距離かなあと感じました。

電車だと他所の街という雰囲気でしたが、自転車だと親近感が湧くので不思議なもんです。

ショートショート「冷たい人」

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天まで届きそうな険しい幹をよじ登って行く。
夜明けまでに頂上へ辿り着かなければ。
この植物の先端には花の精霊がいると言う。
民俗学者の僕は精霊に会うことが長年の夢だった。
道中は危険がいっぱいだ。
巨大な芋虫。ハダニ。アブラムシ。
やっとの事で辿り着いた。
そこには大きな蕾があった。
やがて日が昇ると花が咲き、美しい女性が現れる。
暫し見とれていると精霊は口を開いた。
「はぁ?誰あんた?ウザイんだけど」
吃驚してぼうと立っていると精霊は更に続けた。
「やっと目が覚めたっつうのにテンション下がったわー」と欠伸をした。
僕は慌ててここに来た目的を話した。
聞いているのか聞いてないのか、精霊は口を半開きでジーッとこちらを見ながら座っている。
何かに気づいた精霊は「あ、もう時間だから。じゃねー」と言い残しパッと消えてしまった。
レタスの精霊は花言葉の通り冷たい性格と確認出来、僕は嬉しくなった。(終)

 

今回の話を書く際になかなか良いタイトルが見つからなくて、取り敢えず選んだ「険しいレタス」から「険しい」と「レタス」を調べているとなるほど!と閃くことが出来ました。良い経験になりました。