林 孝光の漫画倉庫

まんが家です。最近は毎日クイックスケッチ(ジェスチャードローイング)と落書きを投稿しています。

ショートショート「冷たい人」

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天まで届きそうな険しい幹をよじ登って行く。
夜明けまでに頂上へ辿り着かなければ。
この植物の先端には花の精霊がいると言う。
民俗学者の僕は精霊に会うことが長年の夢だった。
道中は危険がいっぱいだ。
巨大な芋虫。ハダニ。アブラムシ。
やっとの事で辿り着いた。
そこには大きな蕾があった。
やがて日が昇ると花が咲き、美しい女性が現れる。
暫し見とれていると精霊は口を開いた。
「はぁ?誰あんた?ウザイんだけど」
吃驚してぼうと立っていると精霊は更に続けた。
「やっと目が覚めたっつうのにテンション下がったわー」と欠伸をした。
僕は慌ててここに来た目的を話した。
聞いているのか聞いてないのか、精霊は口を半開きでジーッとこちらを見ながら座っている。
何かに気づいた精霊は「あ、もう時間だから。じゃねー」と言い残しパッと消えてしまった。
レタスの精霊は花言葉の通り冷たい性格と確認出来、僕は嬉しくなった。(終)

 

今回の話を書く際になかなか良いタイトルが見つからなくて、取り敢えず選んだ「険しいレタス」から「険しい」と「レタス」を調べているとなるほど!と閃くことが出来ました。良い経験になりました。