池が無い丘の上で、釣竿を垂らしているジェントルマンがいる。
私は興味本位でつい声をかけてしまった。
ジェントルマン曰く、ここには主がいるとの事。
今日こそ釣れる。
条件は揃っている。
長い事観察してきたから確信しているのだと言う。
何が釣れるんですか、と聞くと「汽車」と答えが返ってきた。
なるほど、餌の代わりに石炭がぶら下がっている。
僕はどうしても行きたい星があって、その汽車で向かうんだよ。
そう真面目に語るジェントルマンに呆れてしまい、私は会釈をして丘を降りることにした。
途中轟音と共に突風が駆け抜けた。
振り返るとジェントルマンの姿は消えていた。
遠くの空から汽笛が聞こえた気がした。(終)
最近上手く書けないなあと自分を観察していたら、知らず知らずにハードルを上げていたようです。ちょっと上達したらすぐに大作を書かなければ、と自分にプレッシャーをかけて肩肘を張ってしまうようです。自分の意思でハードルを上げるのは良くないのかも知れません。