ショートショート「風邪をひいたつらら」

ある冬の朝、軒に出ると1本のつららがちゃんちゃんこを着てマスクをしていた。
風邪をひいたと呻いている。
つららでも風邪をひくのか。
咳き込む度に鼻水ではなくつららが更に伸びていく。
つららは寒い寒いと震えていた。
次の日の朝、障子を開けるとどうやら隣のつらら達に風邪が伝染ってしまったようだ。軒下が一面氷の壁になっていた。
ただ私が看病したお陰か、1ヶ所だけ光が差し込み外の景色が覗けた。(終)