林 孝光の漫画倉庫

まんが家です。最近は毎日クイックスケッチ(ジェスチャードローイング)と落書きを投稿しています。

ショートショート「スピーチドローン」

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私が登壇した。
というのも、壇上にいるのは私ではない。
私そっくりに作り上げたドローンである。
肝心の私は袖口から操縦をしている。
何を隠そう、私は大のあがり症だ。
卒業式のスピーチをやらされる事になり、何がなんでもやりたくない私は大枚を叩いてスピーチが出来るドローンを特注したのであった。
見よドローンが小刻みに震えているあの感じ。
リアリティがあって誰も気づいていないではないか。
緊張している様が伝わって来賓の方々もすすり泣きしている。
サービスにもっとぷるぷるさせて上げよう。ぷるぷるぷるぷる。
音声ボタンを押そうとしたその時、会場内に大きな声が響き渡った。
「バッテリーの残量が足りません。充電をして下さい。」
さっきのサービスでバッテリーを酷使したらしい!
大きなどよめきの中に堂々とした姿で私のドローンは主張し続けた。
「バッテリーの残量が足りません。充電をして下さい。バッテリーのざ(終)