2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧
雲が泣いている。涙が雨になって滝のように流れ落ちてきた。すっかり地上は水浸しだ。どうしたのと聞くと、彼女が怒ってどこかへ行ってしまったらしい。これ以上雨が降られるのはたまったもんじゃない。あれこれ悩みを聞いてやると落ち着いたのか、雨も細く…
長年の品種改良の末、お菓子のグミがなる植物を開発した農家がいた。とても高級で有名だ。霜降りで凄く濃厚な味。霜降りの白いところはりんごの蜜みたいな物。1度口にしたらもう病みつきだ。個数は少ないけど、物凄く濃いので誰しも満足してしまう。噛み心地…
そこでは双方が揉みくちゃになって殴りあっていた。大勢が上へ下へと大騒ぎ。まさに大乱闘と表現するのが相応しい。ぶくぶくと泡を吹きながらきりもみ回転している奴もいる。押しつぶされて水を吐き出している奴もいる。ピー!試合終了の合図が鳴った。天井…
ケムリクサの最終話を見終わって、自分ももっと人を感動させられる物書けないかしらと考えていたら正午を過ぎていたので、本日のショートショートは休載です。悪しからず。
彼は順番を迎えると、おもむろに測量機を設置し測定を始めた。それから風向きを確認し、気温を計り、湿度をメモし、奇声をあげながら塩をまいた。いつの間にやら周辺は緊迫感が漂い、皆が彼に視線を注いでいた。彼は空に向かってピンと手を挙げる。そして真…
友人がカレーをご馳走すると誘ってくれた。夕方家に着くと梯子を片手に出迎えてくれた。これからカレーの仕上げに取り掛かるらしい。おもむろに梯子を空にかけると、そのまま登って行き、なんと夕日をお玉ですくい始めたではないか。なんでも夕日を隠し味に…
ポストから湯気が出ている。ヤカンみたいにカタカタ蓋がぶれている。開けるとむわっと熱気を感じた。中には一通の手紙が入っている。真っ赤で熱々だ。そーっとつまんで部屋に運んで、封を開けた。読んでみると私宛のラブレターだった。私も触発されたのか顔…
何処かへサイクリングに行きたいと思い、地図を眺めていると意外と池袋が近そうに見えたので出かけてきました。 途中でまんが道やトキワ荘で有名な漫画家の聖地「松葉」を通るので昼食がてらよって行きました。漫画家を目指して早11年目!(途中長い空白期間…
天まで届きそうな険しい幹をよじ登って行く。夜明けまでに頂上へ辿り着かなければ。この植物の先端には花の精霊がいると言う。民俗学者の僕は精霊に会うことが長年の夢だった。道中は危険がいっぱいだ。巨大な芋虫。ハダニ。アブラムシ。やっとの事で辿り着…
面白いカメラを買った、と私の化学おたくの友人と天体観測に行く事になった。彼が夜空をパシャッと撮ると、インスタントカメラみたいに写真が出てきた。一見普通の写真だ。彼は何枚か写真を撮り、手応えを感じるとそそくさと家に戻ると言った。彼の家に着き…
授業中突然大声が響き渡った。良く聞いていると私の声ではないか。そう言えば何ヶ月か前に独りでハイキングへ行った際、山に向かってヤッホー!とやまびこをやったけれども私だけ返ってこなかった。面白くないので滅茶苦茶に叫んでたような気がする。誰かの…
ショートショート「夢で見たへそくり」 夢の中でゴロゴロしていたら、棚の隙間から誰かのへそくりを見つけた。 袋を開けてみたら結構な金額が袋に入っている。 夢の中だから別にいいか、と好きな食べ物を頼みまくって豪遊した。 私はリアルに夢を見るので、…
旅行が趣味の友人から引越し祝いにと、手土産でさくら餅を貰った。「鯉・さくら餅」とか書かれた包装紙を外し蓋箱を開けると、一見普通のさくら餅が入っていた。近くで見ると錦鯉の絵が書かれていた。いや、正確に言うとその錦鯉は餅の中を泳いでいた。まる…
僕の田舎では変わった風習がある。年に一度、花火の代わりに縫い物を打ち上げる祭だ。なんでも大昔みすぼらしい旅人の着物を直して上げた所、旅人は実は神様で、それから幸運が舞い込むようになり裁縫に関する物を祭るようになったとか。いつしか古くなった…
まだ肌寒い朝。私は先日買った小さな犬をポケットに入れた。懐中犬といって、ポケットに入れるとカイロみたいにあったかい。何よりちょっと覗くとこちらを見上げて可愛い。実家でペットを飼うのを禁止されていたので、こうやって犬がいるのが嬉しい。優しく…
僕は寝る時、頭からかけ布団をすっぽり被る癖がある。息が出来なくなるからやめなさいとお母さんから言われるんだけど、どうしてもやめたくない。しばらくしてウトウトすると、だんだんそよ風と小鳥の声がしてくる。気づいた時にはどこかの原っぱで、青空の…
私は海をコレクションするのが趣味だ。 各地の海岸へ行き、海をすくって部屋に飾っている。 これは湘南の海。 これはハワイの海。 これはグアムの海。 耳をすますとさざ波が聞こえてくる。 夏になるとキラキラ花火が上がっているのが見える。 季節ごとに世界…
ママは僕が茹でたキャベツが嫌いなのを知ってるのに、身体に良いからって毎日のようにサラダにして出すんだ。今日も夕食の時間か・・・。僕はこの時間が1番憂鬱になる。テーブルにつき恨めしくサラダの皿を睨んでいると、足元で生き物の影が動いたような気が…
私が登壇した。というのも、壇上にいるのは私ではない。私そっくりに作り上げたドローンである。肝心の私は袖口から操縦をしている。何を隠そう、私は大のあがり症だ。卒業式のスピーチをやらされる事になり、何がなんでもやりたくない私は大枚を叩いてスピ…
僕は四コマ1つ書き上げて投稿するのに2時間くらいかかるんですが、世の中何かが話題になるとソレを題材にものの数分で僕より上手い絵を書いて投稿している人を見かけるので羨ましいもんです。